作者の山内道雄さんはストリート・スナップの撮り手として活動する写真家である。これまでに東京、上海、香港、カルカッタ、ワイキキなどの路上で、人や街、それらを包んでいる時代、特に街の中の人にカメラを向けシャッターを切り続けてきた。
受賞作「基隆」の舞台・基隆は、台湾北部に位置する港湾都市である。かつては旧日本軍の軍港として、近年は物流の拠点として発達したところで、その地形は小さな山々に囲まれて起伏が多い場所である。山内さんは2007年と2009年に渡航、計4ヶ月ほど滞在し、市内、郊外へと何度も足を運び、日々刻々と移り変わる人と街との関わりを切り取った。基隆の持つ様々な表情は、見る人見る人にまた新たなイメージを沸き立たせていく。写真の持つ力のあり方に言及した好作である。
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