東京で生まれ育った作者は、一貫してストリートスナップを撮り続けてきた。世界各地の都市を訪ねるうちにそれぞれの雰囲気の違いに興味を惹かれ、2001年に初めて東欧の旧社会主義国を訪れてからは、さらに都市の持つ歴史的意味合いにも思いを馳せるようになった。
「STREET RAMBLER」にはこのような観点から、キューバの首都ハバナに始まり、ニューヨーク、モスクワ、上海、パリ、ベルリン、そして東京と、20世紀、劇的な変化を遂げた各都市の姿が収められている。
これらの都市についてはまた、過去に多くの写真家が題材とし、優れた作品を残してきた。作者はそれら先達の作品とも向き合い、敬意を払った上で撮影に取り組んだ。街に身を置き、ひたすら歩き、そこで出会った人びとや予期せぬ光景に反応し、様々な角度からシャッターを押し、風景とそこに生きる人びとを新しい感覚で捉えてきた。 さらに、卓越した技術で表現された、粗い粒子と白黒のハイコントラストの画面は、作品のテーマとなる「都市」の姿を、より生き生きと見る者の眼に訴えかけている。ドキュメンタリーでもアートだけでもない、そうした魅力にあふれた作品である。
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