今まさに完成を迎える「東京スカイツリー」。この建設にあたり完成予想図用の背景写真の依頼を受けた作者は、この塔の完成は「東京」という都市に大きな変化を与えるということに気づく。そして依頼仕事後も個人でスカイツリーとその周辺の撮影を続け、2008年12月から2011年8月までの2年半をかけて、この作品にまとめた。 スカイツリーが高く伸びるに従い、その周囲の光景、被写体も拡大していく。そのため、当初大判カメラとネガフィルムで行っていた撮影をデジタルカメラに持ち替えた。また被写体をより精密に捉えるため、複数のカットをつなぎ合わせて1枚の写真を創っていくことにした。スカイツリーの成長に合わせフレームは広がり、フレームが広がることにより、これまで切り捨ててきたものも取り込むことができた。 こうして完成した写真は、縦横が自由に変化し、一枚の中に異なる時間が同時に存在することとなった。あらゆる場所の細かい表情が捉えられ確固たる中心は存在しないが、スカイツリーがそれらをまとめる糊のような役割を果たしている。 江戸時代からの様々な歴史の層が入り交じる東京という土地独特の雰囲気、記憶にスカイツリーが加わった。この写真集はその場所の記憶を記録する、いわば絵巻物のような作品に仕上がっている。新しい風景写真の扉を開ける画期的な仕事である。
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