林忠彦賞

 

 

第19回 小栗 昌子/写真集・写真展・雑誌掲載「トオヌップ」

田植えの後で
田植えの後で

小栗 昌子 写真集・写真展・雑誌掲載 「トオヌップ」


 遠野は遙か昔、湖であったといわれる。その名はアイヌ語の「TO・NUP」(湖のある丘原)に由来するともいい、今でも日本の原風景が残る土地である。柳田國男『遠野物語』には遠野に伝わる民話が集録され、この地は「民話の里」として知られる。
 小栗昌子さんは、1998年旅行で訪れた遠野の自然や祭、遠野の風土に生きる人びとの存在感に魅せられた。“この場所を撮りたい”という強い思いに突き動かされ移住を決意、翌1999年岩手県遠野市に移り住んだ。そしてこの地で写真を撮り続け、2005年写真集『百年のひまわり』を刊行した。偶然出会った東北に暮らす初老の姉弟、その3年間の生の営みを捉えた作品は反響を呼び、同年第3回ビジュアルアーツフォトアワード奨励部門大賞を受賞した。また翌年にかけて開催された同作品の写真展は、第16回林忠彦賞の最終候補作品となっている。
 遠野に移り住んで10年、日々この土地の持つ力に圧倒され「目の前にある命に触れ向かい合うことに精一杯」と小栗さんは言う。大地から、樹木から、人びとの営みから、それらの命から生まれる力と向き合い、見つめ続け、根気強く遠野の人たちと触れあい、優れた技術で撮影を続けた。「近況報告みたいな気持ち」で写真展を開催し、それが今回の写真集『トオヌップ』となって結実した。将来を嘱望される作家である。

小栗 昌子(おぐり・まさこ)

写真家
1994年名古屋ビジュアルアーツ卒業。
1995年ビジュアルアーツギャラリー名古屋で写真展「川のほとりで」開催。 1998年に訪れた遠野の土地と人に魅せられ移住を決意、翌1999年移り住んだ。
2002年遠野風の丘ギャラリーで写真展「かくれ里」開催。
2005年写真集『百年のひまわり』発行、第3回ビジュアルアーツフォトアワード奨励部門大賞受賞。翌年にかけてビジュアルアーツギャラリー(東京・名古屋・大阪・九州)で写真展「百年のひまわり」を開催。
2006年日本写真協会新人賞受賞。
2008年写真展「トオヌップ」をニコンサロン(銀座・大阪) 、ビジュアルアーツギャラリー(名古屋)で開催。
2009年写真展「トオヌップ」をギャラリー冬青(東京)で開催。写真集『トオヌップ』発行(冬青社)。月刊誌「日本カメラ」4月号に同作品掲載。


  • 太田真三「新ニッポン百景」
  • 小栗昌子「トオヌップ」
  • 北島敬三「1975-1991コザ/東京/ニューヨーク/
         東欧/ソ連」
  • 小柴一良「水俣・MINAMATA「水俣よサヨウナラ、
         コンニチハ」」
  • 菅原一剛「DUST MY BROOM」
  • 鶴崎 燃「海を渡って」
  • 長倉洋海「人間交路―シルクロード」
  • 百瀬俊哉「インド照覧」
  • 矢口清貴「魂は廻る―マブイハメグル」
  • 吉村和敏「Sense of Japan」
林忠彦賞事務局
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