作者の大西成明さんは、「生命」や「身体」というテーマにこだわりを持った写真家である。最初の写真集『象の耳』(1992年)では、動物園にいる動物たちの細部を撮影し、その形態と色彩に刻まれた35億年にわたる生命の記憶を探検した。
『病院の時代』(1999~2000年)では、全国の病院を訪ねて、日本人の“生老病死”の実態に迫った。それと並行して、「脳」や「骨」という、生命の究極の形にも着目し、物(モノ)と霊(モノ)を繋ぐ、身体イメージを紡いできた。
そして、『ロマンティック・リハビリテーション』(2008年)である。
これは、脳梗塞・脳卒中・頚髄損傷、あるいは統合失調症・薬物依存症といった、過酷な身体を背負いながらも現実を切実に生きる人々と、彼らに向き合い支える医師、療法士、家族の人たちの日々の格闘を、リハビリ群像として真正面からとらえたものである。
「リハビリ室での苦しく単純な機能回復訓練」という従来のリハビリ観を超えて、それぞれのひとの「夢見る力」が切り開いていく「ロマンティックなリハビリ」というものが本当に可能なのだろうか・・・大西さんの写真は、この時代の「希望と再生の姿」を静かに語りかけてくる。
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