1995年に初めて渡米した作者は、国際都市ニューヨーク最大の交通機関である地下鉄に魅了され、幾度となく高知からニューヨークへ通って取材し、写真展としてまとめあげた。 通学、仕事、娯楽、観光などで一日約400万人が利用するニューヨークの地下鉄は、24時間眠らない雑踏と静寂の世界である。 男女のロマンス、ホームレスの叫び、喧嘩など、人が集まる場所ゆえの人間模様も悲喜こもごもであり、また人種の坩堝(るつぼ)でもある。 作者は特に、地下鉄構内で熱演するストリートミュージシャンに温かい視線を注いでいる。急ぐ足を止め、熱心に聞き入る乗客たち。そんな情景からは芸術文化を愛するニューヨーカーたちの熱い鼓動が伝わってくる。 作者の不屈の撮影魂と精緻なプリントワークは、ニューヨークの高い文化意識と躍動感あふれる「今」を十二分に再現している。 |