林忠彦賞

 

 

第32回 奥山 淳志/写真集「BENZO ESQUISSES 1920-2012」

奥山 淳志/写真集「BENZO ESQUISSES 1920-2012」
 

奥山 淳志/写真集「BENZO ESQUISSES 1920-2012」


 作者の奥山さんは、25歳のときに、北海道の大自然の中で自給自足で暮らす井上弁造さんと出会いました。彼の暮らしぶりや生き方に触れ、彼が2012年に92歳で亡くなったのちも現在まで、26年にわたり彼の生きざまを写真で伝え続けています。
 2018年に1作目の『BENZO 弁造』、続いて翌年には『庭とエスキース』にまとめあげ、この『BENZO ESQUISSES 1920-2012』は3作目となります。
 様々な事情により絵描きへの夢は叶わなくても一生絵を描き続けた弁造さん。この写真集は、長年にわたり弁造さんと向き合ってきた作者が、彼の死後、遺されていた膨大なエスキース(習作)を通して、人間が生きるということがどういうことかを真摯に見つめようとした作品です。
 本作は、北海道に暮らす井上弁造さんに出会った作者が、その生き方に感銘を受け、長年にわたり取材したドキュメンタリーです。一見、画集のようにも見えますが、絵を単に複写しているわけではなく、弁造さんが暮らしていた丸太小屋の周りの植物などを絵に重ね、またそれらを影としても写し込んでいます。弁造さんが遺した絵を通して、彼の心情や思いを読み解いていこうとする斬新な表現が高く評価されました。写真集には詩情豊かでポエジーな雰囲気が漂います。作者の弁造さんへの愛情あふれる温かいまなざしが感じられる作品です。

奥山 淳志 (おくやま あつし) 奥山 淳志 (おくやま あつし)

1972年7月11日大阪生まれ、奈良育ち(51歳)
京都外国語大学卒業
1998年 岩手県雫石に移住し、写真家として活動を開始
2006年 フォトドキュメンタリーNIPPON
(『Country Songs ここで生きている』)
2015年 第40回伊奈信男賞(『あたらしい糸に』)
2018年 日本写真協会新人賞(『弁造 Benzo』)
2019年 第35回写真の町 東川賞 特別作家賞(『弁造 Benzo』)
2022年 令和3年度岩手県美術選奨(『動物たちの家』)

  • 安掛 正仁 「朧眼風土記」
  • 金川 晋吾 「長い間」
  • 菅野 純  「Planet Fukushima」
  • 藤本 巧  「朝鮮通信使 誠信の交わり 全弐巻」
  • 淵上 裕太 「上野公園」
  • 松村 和彦 「心の糸」
  • 三島 正  「Flat」
  • 水島 貴大 「環島回憶錄 Memoirs of Huandao」
  • 山下 晃伸 「夜光性静物観察記」
  • 梁 丞佑  「荷物」

大石 芳野 <選考委員長> 写真家
笠原 美智子  長野県立美術館館長
河野 和典 編集者、(公社)日本写真協会出版広報委員
小林 紀晴 写真家、東京工芸大学教授
有田 順一 周南市美術博物館館長

(敬称略・五十音順)

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