『東京 二〇二〇、二〇二一。』は、新型コロナウイルス感染症に見舞われた2年間の東京を捉えた写真集である。目に見えないウイルス、コロナを写真家としてどう捉えるか。作者は都下のあらゆる場所へ赴きシャッターを切った。人通りの途絶えた町並や広場、中止になったイベント、しかし災厄の中でも続いていく社会活動、日々の生業、伝統行事、そしてオリンピック。
一見淡々と撮影された1コマ1コマは、連続して見ることによって、パンデミック下の巨大都市の風景を俯瞰的に描き出している。そして同時に、その底に潜む社会不安や人間の生来持つ業といった様々ななにかを伝えてくるのである。この写真集を見るとき、我々はまさに当事者として、共感を覚えることになるのである。
この作品を通して私たちは、東京だけでなく日本人としてのあり方をもう一度見直すことになるだろう。そして今後新型コロナが終息し、その記憶も薄れた頃、当時の東京、日本の姿を赤裸々に伝える、まさに時代を映す写真となるのである。
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