林忠彦賞

 

 

第30回 初沢亜利/写真集「東京 二〇二〇、二〇二一。」

「東京 二〇二〇、二〇二一。」

2020.5.19 北青山3丁目

 

初沢亜利/写真集「東京 二〇二〇、二〇二一。」


 『東京 二〇二〇、二〇二一。』は、新型コロナウイルス感染症に見舞われた2年間の東京を捉えた写真集である。目に見えないウイルス、コロナを写真家としてどう捉えるか。作者は都下のあらゆる場所へ赴きシャッターを切った。人通りの途絶えた町並や広場、中止になったイベント、しかし災厄の中でも続いていく社会活動、日々の生業、伝統行事、そしてオリンピック。
 一見淡々と撮影された1コマ1コマは、連続して見ることによって、パンデミック下の巨大都市の風景を俯瞰的に描き出している。そして同時に、その底に潜む社会不安や人間の生来持つ業といった様々ななにかを伝えてくるのである。この写真集を見るとき、我々はまさに当事者として、共感を覚えることになるのである。
 この作品を通して私たちは、東京だけでなく日本人としてのあり方をもう一度見直すことになるだろう。そして今後新型コロナが終息し、その記憶も薄れた頃、当時の東京、日本の姿を赤裸々に伝える、まさに時代を映す写真となるのである。

初沢 亜利(はつざわ あり) 初沢 亜利(はつざわ あり)

 1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒業。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家としての活動を開始する。2013年東川賞新人作家賞。2016年日本写真協会新人賞。2019年さがみはら写真新人奨励賞受賞。現在、東京を拠点に活動を続けている。

  • 石川 竜一  「いのちのうちがわ」
  • 岩波 友紀  「One last hug 命を捜す」
  • 宇井 眞紀子 「伝え守る アイヌ三世代の物語」
  • 兼子 裕代  「APPEARANCE」
  • キセキ ミチコ「A complicated city」
  • 蔵 真墨   「香港 ひざし まなざし」
  • 古賀 絵里子 「BELL」
  • 田川 基成  「見果てぬ海」
  • 本山 周平  「日本 2010-2020」
  • 山元 彩香
    「We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers」
  • Ryu Ika「The Second Seeing」

大石 芳野 <選考委員長> 写真家
笠原 美智子  (公財)石橋財団アーティゾン美術館副館長
河野 和典 編集者、(公社)日本写真協会出版広報委員
小林 紀晴 写真家
有田 順一 周南市美術博物館館長

(敬称略・五十音順)

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