受賞作「川はゆく」は2013年から撮り続けた広島の風景である。 作者にとっての広島は、生きる場所としての今現在の広島である。四季を通じて街を歩きながら日常の広島を淡々と撮り続けた。しかし何気ない風景の中にも73年前の記憶は顔を覗かせる。広島を撮りながら「ヒロシマ」を見つめ続けることは自分自身を見つめ直すことにも似ていたという。 「川はゆく」は2016年に写真展で発表された。大きな反響を呼び、第41回伊奈信男賞を受賞した。女性として初めての受賞である。そして2017年、新たなショットを加えるなど大幅に構成を変更し240ページの大作に仕上げたのが本書である。世界的に注目される都市広島を、そこに住む者ならではの視線で捉えており、客観的でありながらも私的な眼差しで撮影された写真の数々は、臨場感を感じさせ非常に新鮮で、選考委員会でも高く評価された。
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