作者は、チベットの遊牧民を捉えた「西藏(チベット)より肖像」で1998年に優れた新人写真家の登竜門といわれる第35回太陽賞を受賞した。これと時期を前後して大阪から東京に居を移したが、チベットと比べた時に、東京という都市の利便性を享受する人々の姿は被写体として少し物足りなさを感じたという。しかしよく目を凝らし東京の街を観察すれば、そこには都市と共存しながらたくましく生きる人々の姿が見えるはずと思い直し、時間を作っては主として新宿を歩き、都市と共存しながらたくましく生きる人間の姿をカメラに収めてきた。 都市に生きる生物としての人間の姿を追い求める日々を続け、2006年から自らの名を冠した「ariphoto」として発表を続けてきた。それから10年、その仕事を「TOKYO CIRCULATION」として発表したのが本作である。作者の目に映る東京は壮大な循環を持つ一つの生態系であり、作者が、被写体となる人たちとコミュニケーションをとりながら撮影した作品の数々は、重厚感あふれる中にも、大変人間的であり、作品の持つ圧倒的なエネルギーは選考委員会でも高く評価された。
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